【実践例】知的障害の申立書、20歳時に通院がない場合は?「親なきあと」を見据えた遡及請求のコツ

「特別支援学校を卒業して作業所に通っているけれど、工賃も安くて将来が不安……」
「身の回りのことは一通りできるから、障害年金はもらえないと思っていた」

今回は、知的障害の息子さんを持つお母様(高橋さん・仮名)との対話を実況解説します。


2. 相談者プロフィール

今回のペルソナ:高橋さん(母)と健太さん(息子)

高橋さんアイコン

対象者:健太さん(25歳)

診断名:知的障害(療育手帳 B判定)

  • 状況:特別支援学校を卒業後、現在は就労継続支援B型事業所に通所中。
  • 悩み:「身の回りのことはできるので年金はもらえないと思っていた。親なきあとの生活費を確保してあげたいが、20歳当時は病院に行っておらず、遡って請求できるか不安」

3. 【実況】管理人によるヒアリング

管理人
管理人

こんにちは。今日は息子さんの将来についてのご相談ですね。

高橋さん
高橋さん

そうなんです。今25歳になる息子がいるんですが、特別支援学校を卒業して就労継続支援B型作業所に通っているんですけど、給料も安いので今後が心配で…。いつまでも私たちがいるわけではないので…。

管理人
管理人

そのお悩み、本当にお辛いですよね。今日は小さい頃のお話からきかせてもらってもいいですか?

高橋さん
高橋さん

障害年金のことは知ってはいたんですけど、ご飯は食べるしお風呂も入るし、作業所の友達と遊んだりすることもあるので、年金はもらえないと思っていて…。

管理人
管理人

実はそこがポイントなんです。障害年金は「一人暮らしをしたときにどれだけ支障があるか」という視点で審査されます。お母様が声をかけなくても、自力で清潔を保ったり、栄養を考えた食事ができたりしますか?

高橋さん
高橋さん

…あ、そう言われると、お風呂も「入りなさい」と言わないと忘れてしまいますし、買い物もお札を全部出してしまうような状態で…。一人だと生活が成り立たないことに気づきました。


4. 【翻訳】生の言葉を「評価される言葉」へ

高橋さんのエピソードを、審査官に伝わる表現に書き換えます。

高橋さんとのヒアリングから見えてきた、健太さんの本当の不自由さを申立書用の言葉に変換してみましょう。

生活場面 お母様が見ている日常 書類に書くべき文章(OK例)
食事 好き嫌いなく何でも食べる。 献立の立案や調理は不能。放置すれば菓子パン等の偏った摂取のみとなり、栄養管理が全くできない。家族の用意が必要不可欠。
入浴・整容 お風呂には一人で入っている。 入浴の必要性を判断できず、声掛けがないと数日間入浴しない。洗身の不十分さもあり、常時確認と促しを要する。
金銭管理 コンビニで好きなものを買える。 金銭の価値理解が不十分でお釣りの計算ができない。計画的な使用が困難なため、親が財布の現金を全額管理している。
社会性 友達と映画を見に行く。 ルート検索やチケット購入は全て親が代行。不測の事態への対応が不能なため、親の事前の段取りなしには単独での外出は成立しない。

5.20歳当時の診断書がなくても「遡及」を諦めない

管理人
管理人

さて、高橋さん。ここからが本題です。健太さんの20歳当時(5年前)、病院には行っていなかったとおっしゃいましたね。

高橋さん
高橋さん

はい。当時は安定していたので、あえて病院へ行く必要を感じていなくて。でも、あの頃から支援が必要だったのは間違いありません。

管理人
管理人

そこで、私が実際に行った請求のときのように、「当時の客観的な資料」をかき集めましょう。高橋さんの手元にある、これらが「宝物」になります。

  • 20歳以前に療育手帳を申請した際の「診断書の写し」
  • 特別支援学校時代の「通知表」や「個別の指導計画」
  • 当時の福祉サービスの利用記録や、学校の先生との連絡帳
高橋さん
高橋さん

そんなものが証拠になるんですか?

管理人
管理人

もちろんです!冒頭でお話しした令和6年7月の札幌地裁の判決でも、当時の診断書がない代わりに「療育手帳の判定記録」などが決め手となって、国に遡及を認めさせたんです。

高橋さん
高橋さん

当時の先生が書いてくれた「集団生活での困難さ」や「作業学習での様子」が、今の健太に繋がっていることを証明してくれるんですね……!

6.知っておきたい最新判決のニュース

💡 診断書なしでも遡及が認められた実例(札幌地裁 2024年7月2日)

当時の受診記録がなくても、療育手帳の変遷や特別支援教育の履歴を丁寧に積み上げることで「認定日の障害状態」を証明できる可能性があります。

ただし、こちらの申請については非常に専門的でご自身で行っていくことは難しいケースだと感じています。
自分の手に余るようであれば、専門家を頼るということも視野に入れないといけません。

家族のため、子供のため、しっかり見極めていくようにしましょう。

[👉 外部サイト:札幌地裁の判決ニュースを確認する]

7. 完成した文章サンプル

田中さんのヒアリング内容について、実際の病歴就労状況等申立書を作成してみました。

みなさんの状況にあわせながら、このサンプルを参考にしてみてください。

知的障害の申立書で大事なことは、「親がいなかったらどうなるか」という視点で事実を伝えていくことです。
特に親御さんは「周りに迷惑をかけないよう、自分が全部やってあげなきゃ」という思いから、無意識に支援を日常化してしまっていることが多いので注意が必要です。

例えばですが……

【身の回りのことは一通り自分でできている】

という文章があったとします。一見、自立しているように見えますが、審査側には「日常生活に支障がない(=年金は不要)」と捉えられてしまうリスクがあります。

【親が声をかけない限り入浴や着替えを行わず、金銭管理も親が代行しなければ全額使い切ってしまうなど、常に家族の管理・監督下にある】

という文章であれば、「本人の努力や自発性だけでは生活が成り立たない状態」であることが、事実として伝わります。

「何ができるか」ではなく、「誰の、どのような手助けがあって、ようやく形になっているのか」
この視点で書くことが、適正な等級認定への一番の近道です。


8. 管理人からのメッセージ

健太さんの事例のように、20歳当時に病院へ行っていなかったとしても、諦めるのはまだ早いです。

「うちの子、診断書が取れないから無理だわ……」と立ち止まってしまう前に、まずは押し入れの奥にある通知表や連絡帳を探してみてください。
その中に、今の不自由さに繋がる「確かな証拠」が眠っているはずです。

「この通知表の書き方で大丈夫かな?」
「一人暮らし想定って、具体的にどう書けばいいの?」

もし一人で悩んでしまったら、ぜひ当サイトの「お悩み相談掲示板」へお立ち寄りください。
お母様が今まで積み重ねてきた支援の記録を、一緒に「受給のための言葉」へ整理していきましょう。

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